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程度 | 障害の状態 |
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1 級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2 級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3 級 | 身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
代謝疾患による障害の認定基準も他の内臓疾患による障害等の認定基準と同じ記載になっています。
検査成績/臨床所見 | 一般状態区分 | |||
---|---|---|---|---|
オ | エ | ウ | イ | |
血清Cペプチド値が0.3mg/ml未満 | - | - | 3級 | 3級 |
意識障害により自己回復ができない重症低血糖の所見が平均して月1回以上あるもの | - | - | 3級 | 3級 |
インスリン治療中に糖尿病ケトアシドーシスまたは高血糖高浸透圧症候群による入院が年1回以上あるもの | - | - | 3級 | 3級 |
では、なぜこのような図示になるのか、以下詳しく見ていきましょう。
認定要領は代謝疾患の説明および認定の実際から始まっています。
① 代謝疾患は、糖代謝、脂質代謝、蛋白代謝、尿酸代謝、その他の代謝の異常に分けられるが、認定の対象となる代謝疾患による障害は糖尿病が圧倒的に多いため、本節においては、糖尿病を基準に定める。 |
つまり、代謝疾患=糖尿病として、「第15節/代謝疾患による障害」は糖尿病の認定要領を解説するとしています。
以下、糖尿病の解説および認定における特性が記載されています。
② 糖尿病とは、その原因のいかんを問わず、インスリンの作用不足に基づく糖質、脂質、タンパク質の代謝異常によるものであり、その中心をなすものは高血糖である。 糖尿病患者の血糖コントロールの困難な状態が長年にわたると、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性壊疽等の慢性合併症が発症、伸展することになる。 糖尿病の認定は、血糖のコントロール状態そのものの認定もあるが、多くは糖尿病合併症に対する認定である。 |
糖尿病は疾病が進展することによる合併症で認定されることが多く、各々「眼の障害」「精神の障害」「腎疾患による障害」等、合併症が発現した部位で認定されるとしています。
⑥ 糖尿病性網膜症 | 「第1節 眼の障害」の認定要領により認定する。 |
⑦ 糖尿病性壊疽 | 運動障害を生じているものは、「第7節 肢体の障害」の認定要領により認定する。 |
⑧ 糖尿病性神経障害 | 激痛、著明な知覚の障害、重度の自律神経失調症状等があるものは、「第9節 神経系統の障害」の認定要領で認定する。 |
⑨ 糖尿病性腎症 | 「第12節 腎疾患による障害」の認定要領により認定する。 |
⑩ その他の代謝疾患 | 合併症の有無及びその程度、治療及び症状の経過、一般検査及び特殊検査の検査成績、認定時の具体的な日常生活状況等を十分考慮して、総合的に認定する。 |
では、わざわざ代謝疾患による障害の節が設けてあるのは、糖尿病で認定されるケースがあるからということになりますが、その際の設定については次のように記載されています。
③ 糖尿病による障害の程度は、合併症の有無及びその程度、代謝のコントロール状態、治療及び症状の経過、具体的な日常説活状況等を十分考慮し、総合的に認定する。 |
④ 糖尿病による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。 |
他の内臓疾患と同様、代謝疾患による障害も一般状態区分表「全身状態(Performance Status=PS)」は大変重要な役割を果たします。
一般状態区分の説明と障害等級の目安については、「血液・造血器疾患による障害」の解説ページで詳述しているので参照してください。
糖尿病で認定されるケースについて、以下のように認定要領で定められています。
⑤ 糖尿病については、必要なインスリン治療を行ってもなお血糖のコントロールが困難なもので、次のいずれかに該当するものを3級と認定する。 ただし、検査日より前に90日以上継続して必要なインスリン治療を行っていることについて、確認できた者に限り、認定を行う者とする。 なお、症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。 |
まず、インスリン治療を行っていても、血糖のコントロールが困難なものとされています。
決定的なのは、検査日より前に少なくとも90日以上継続してインスリン治療を行っていなければ認定を受けることができないとしている点です。
等級は3級とされています。合併症が発現していない状態では、障害としてはそれほど重く見られていないということでしょうか。以下のいずれかに該当するものが認定対象とされています。
⑤ ア 内因性のインスリン分泌が枯渇している状態で、空腹時又は随時の血清Cペプチド値が0.3ng/ml未満を示すもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの イ 意識障害により自己回復ができない重症低血糖絵の所見が平均して月1回以上あるもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの ウ インスリン治療中に糖尿病ケトアシドーシス又は高血糖高浸透圧症候群による入院が年1回以上あるもので、かつ、一般状態区分表のエ又はイに該当するも |
一般状態区分がウまたはイに該当するものということなので、一般状態区分から見ても3級のみということになります。
以上をまとめると節頭の表のようになります。
検査成績/臨床所見 | 一般状態区分 | |||
---|---|---|---|---|
オ | エ | ウ | イ | |
血清Cペプチド値が0.3mg/ml未満 | - | - | 3級 | 3級 |
意識障害により自己回復ができない重症低血糖の所見が平均して月1回以上あるもの | - | - | 3級 | 3級 |
インスリン治療中に糖尿病ケトアシドーシスまたは高血糖高浸透圧症候群による入院が年1回以上あるもの | - | - | 3級 | 3級 |
ただし、症状、検査成績および具体的な日常生活状況等によつては、さらに上位等級に認定するとされているので、検査数値が著しく不芳である、あるいは一般状態区分(全身状態)が"エ"や"オ"の場合は上位等級も考慮するということです。
⑤ ・・・ なお、症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。 ア 内因性のインスリン・・・ |
ここで、用語の解説をしておきます。
項 目 | 説 明 | 単位等 | 基準値(正常値)等 |
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血清Cペプチド値 | :血清Cペプチドは膵臓で合成されるインスリンの前駆物質で、インスリンと同じ比率で分泌されます。インスリン注射をしている場合は、血清Cペプチトを測定することでインスリンの分泌状態がよく把握できます。 | ng/ml | 0.8~2.5 |
重症低血糖 | 薬物治療等により血液中のブドウ糖が低下する状態。意識が遠くなったり、昏睡や痙攣などの症状が出ます。 | mg/dl | 70~109 |
糖尿病ケトアシドーシス | 糖尿病でインスリンが不足するとエネルギー源として糖分を利用できなくなり、脂肪酸を使うため、体が酸性になる状態になります。 | のどの渇き、多飲、多尿、神経症状、意識障害、昏睡が起こる | |
高血糖高浸透圧症候群 | 血液中のブドウ糖濃度が異常に上昇している状態を高血糖といい、高血糖と高ナトリウム血症等により血液が濃縮されて浸透圧が高くなることを高浸透圧といいます。強い脱水症状が起こります。 | 血糖値 基準値 70~109 mg/dl 浸透圧 基準値 275~290 mOsm/kgH2O |
診断書は様式第120号の6-(2)を使用します。ただし、この診断書は「腎疾患・肝疾患。糖尿病の障害用」と併用できる様式になっていますので、項番⑭の「糖尿病」を見ることになりますが、まずは項番⑪「一般状態区分表」のア、イ、ウ、エ、オのどこにチェックがしてあるかを確認しておきましょう。
2級を目指しているなら"エ"に、3級を目指しているなら"ウ"にチェックがあれば、とりあえず一安心です。
それでは診断書項番⑭「糖尿病」の解説に入ります。
糖尿病 の型 | 「1型糖尿病」か「2型糖尿病」か「その他の型」かをチェックするようになっています。 |
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1型 糖尿病 | 遺伝や生活習慣が関係しているものではなく、ウイルス感染によるリンパ球の自己免疫疾患。 |
2型 糖尿病 | 高カロリー食、高脂肪食、運動不足など生活習慣による病気で、インスリンの分泌や作用の低下を招き、血液中のブドウ糖が多くなることで起こります。 |
検査成績 | ●直近3回の「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」と「空腹時又は食後血糖値」、「各検査日より前に90日以上継続して必要なインスリン治療を実施している」かの有無を記載してもらいます。 ●血清Cペプチド値を記載してもらいます。 |
HbA1C | ヘモグロビンは全身の細胞に酸素を送る働きをしていますが、血液中のブドウ糖がヘモグロビンに結合すると糖化ヘモグロビンとなります。HbA1cは糖化ヘモグロビンがどのくらいの割合で存在しているかをパーセント(%)で表したもので、血糖値の高い状態が続くと、HbA1cは高くなります。正常範囲は、日本糖尿病学会の糖尿病治療ガイドラインで、4.6~6.2%です。 |
空腹時 血糖値 | 日本糖尿病学会が定める正常な空腹時血糖値は、100mg/dl未満で、126mg/dl以上を糖尿病としています。 |
治療状況 | 施行されている治療を記載してもらいます。 |
血敏コントロールの困難な状態 | ①意識障害により自己回復ができない重症低血糖、 ②糖尿病ケトアシドーシスによる入院、 ③高血糖高浸透圧症候群による入院、に該当すれば記入してもらいます。 |
合併症 | 何か合併症があれば記載してもらいます。 |
認定要領から診断書を見ていえることは、まず診断書項番⑭の「3 治療状況」でインスリンによる治療が記されていないと認定対象とならないということです。
次に、「2 検査成績」の血清Cペプチド値が該当しているか(0.3ng/ml未満)、「4 血糖コントロールの困難な状況」の①意識障害により自己回復ができない重症低血糖(平均して月1回以上)、②糖尿病ケトアシドーシスによる入院(年1回以上)、③高血糖高浸透圧症候群による入院(年1回以上)、に該当しているかを見ます。
いずれかに該当し、かつ、上記一般状態区分も満たしていれば、3級ということになります。
なお、他の数値で重要なものとして空腹時血糖値(正常値100mg/dl)とHbA1c(4.6~6.2%)がありますので、この数値にも注意しておきましょう。
項番⑮はその他の代謝疾患がある場合に記載してもらいます。
以上、認定要領に記載の項目を中心に説明してきましたが、もちろん障害等級は総合的に認定されるので、診断書の他の項目がどうでもよいということではありません。
例えば、上記等級例示から見て3級相当であっても、診断書項番⑯「現症時の日常生活活動能力及び労働能力」の欄に「元気で普通に働いている」といった記載があれば、書類が返戻されてくることも考えられます。
これらの項番の記載が検査数値や一般状態区分と矛盾していないか確認してください。
●3級の事例
【診断書事例】項番①は1型糖尿病と脂質異常、脂肪肝となっており、代謝疾患による障害のほかに肝疾患のあることもわかります。
項番⑪に一般状態区分表があります。区分は「ウ 歩行やみのまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起床しているもの」です。
次に、項番⑬「肝疾患」に記載がありますが、臨床所見、検査成績のいずれも障害等級に該当しません。そこで、項番⑭「糖尿病」で見てみます。
項番⑭の「2 検査成績」の「各検査日より前に90日以上継続して必要なインスリン治療を実施している」にチェックがあり、「空腹時又は随時血清Cペプチド値」が0.2となっています。
血清Cペプチド値が0.3ng/ml未満で、かつ、一般状態区分が"ウ"ですので、認定要領⑤アに該当し。3級ということになります。
ちなみに、空腹時血糖値もHbA1cも基準値をオーバーしてかなり高いです。
代謝疾患による障害、特に糖尿病はほとんどの場合、合併症を伴います。また、障害の状態に該当する場合というのも、ほとんど合併症によるものです。したがって、代謝疾患による障害で請求することは少ないと思います。しかし、合併症で請求できない場合に、"もしかしたら代謝疾患による障害で請求できるのではないか"という視点は常に持っておいてください。 |