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高血圧症による障害

障害(等級)認定基準【解説】

高血圧症による障害は、単に高血圧というだけで認定の対象になるものではありません。高血圧による合併症により障害認定されることが多いので、高血圧症による障害で請求することは少ないと思われます。

【認定基準の記載】

程度 障害の状態
1 級 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2 級 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3 級 身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

高血圧症による障害の認定基準も他の内臓疾患による障害等の認定基準と同じ記載になっています。ただ、認定基準の下に記載されている注釈は、注意しておきましょう。

高血圧症によるによる障害の程度は、自覚症状、他覚所見、一般状態、血圧検査、血圧以外の心血管病の危険因子、脳、心臓及び腎臓における高血圧性臓器障害並びに心血管病の合併の有無及びその程度等、眼底所見、年齢、原因(本態性又は二次性)、治療及び症状の経過、具体的な日常生活状況等を十分考慮しね総合的に認定する …

 

 

まず、障害等級の例示を図示するところから始めましょう。以下のように図示することができます。

●高血圧症による障害の等級例示
等級 障害の状態
1級 悪性高血圧症
2級 1年内の一過性脳虚血発作、動脈硬化+出血、白斑を伴う高血圧性網膜症
3級

頭痛、めまい等の自覚症状+1年以上前に一過性脳虚血発作、眼底に著明な動脈硬化の所見を認めるもの

大動脈解離や大動脈瘤を合併した高血圧

では、なぜこのような図示になるのか、詳しく見ていきます。

【認定要領における区分】

認定要領は高血圧症の説明から始まっています。

① 高血圧症とは、おおむね降圧薬服用下で最大血圧が140mmHg以上、最小血圧が90mmHg以上のものをいう。

中高年にはおなじみの数値かと思いますが、最大血圧140mmHg以上、最小血圧90mmHg以上を高血圧としています。高血圧症は合併症を併発するので、認定もそれぞれの合併症を発生した部位の節で行うことになります。単に高血圧というだけでは認定の対象にはならないということです。

② 高血圧症により脳の障害を合併したものによる障害の程度は、本章「第8節 精神の障害」及び「第9節 神経系統の障害」の認定要領により認定する。
③ 高血圧症により心疾患を合併したものによる障害の程度は、本章「第11節 心疾患による障害」の認定基準により認定する。
④ 高血圧症により腎疾患を合併したものによる障害の程度は、本章「第12節 腎疾患による障害」の認定基準により認定する。
⑨ 動脈硬化性抹消動脈閉塞症を合併した高血圧で、運動障害を生じているものは、本章「第7節 肢体の障害」の認定要領により認定する。 
⑩ 単に高血圧みでは認定の対象とはならない。

ただし、以下の場合は別途本節で認定要領が定められています。

【1級の例示】

⑤ 悪性高血圧症は1級と認定する。

  この場合において「悪性高血圧症」とは、次の条件を満たす場合をいう。

 ア 高い拡張期高血圧(通常最小血圧が120mmHg以上)。

 イ 眼底所見で、Keith-Wagener分類Ⅲ群以上のもの。

 ウ 腎機能障害が急激に進行し、放置すれば腎不全にいたる。

 エ 全身症状の急激な悪化を示し、血圧、腎障害の増悪とともに、脳症状や心不全を多く伴う。

悪性高血圧症は上記ア~エのすべての条件を満たさないと該当しません。

ここで用語の解説をしておきましょう。

項目 説明 基準値等 障害認定
拡張期性高血圧 血管が収縮する時の血圧を収縮期血圧、拡張する時の血圧を拡張期血圧といいます。収縮期血圧よりも拡張期血圧のほうが重要視されています。 拡張期血圧が90mmHg以上は高血圧 拡張期血圧が120mmHg以上は高血圧
Keith-Wagener分類 高血圧や動脈硬化による眼底変化の検査。高血圧性眼底変化を0~Ⅳに分類。 0~Ⅳに分類。Ⅳが最も重い。 Ⅲ以上。硬化性変化と血管攣性網膜症、網膜浮腫、綿花状白班、出血あ。

【2級の例示】

⑥ 1年内の一過性脳虚血発作、動脈硬化の所見のほかに出血、白班を伴う高血圧性網膜症むを有するものは2級と認定する。

ここでも用語の解説をしておきましょう。

項目 説明 障害認定
一過性脳虚血発作 血管が一時的に詰まって脳に虚血が起こり、一過性の脳梗塞と同じ症状が起こります。 現時点から一年内の発症、動脈硬化、高血圧性網膜症とを合わせて発現。
高血圧性網膜症 高血圧が亢進すると、眼底血管に狭細等が現れ、網膜症になります。進行すると網膜が浮腫状になり白班が現れます。 動脈硬化、一過性脳虚血発作と合わせて発現。

【3級の例示】

⑦ 頭痛、めまい、耳鳴り、手足のしびれ等の自覚症状があり、1年以上前に一過性脳虚血発作のあったもの、眼底に著明な動脈硬化の所見を認めるものは3級と認定する。
⑧ 大動脈解離や大動脈瘤を合併した高血圧は3級と認定する。なお、症状、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。

⑦は、上記⑥(2級の例示)よりも少し症状の軽いものと考えればよいでしょう。一過性脳虚血発作も現時点から1年以上前でもよいとしています。ろ

⑧は、単なる高血圧でなく、大動脈解離や大動脈瘤を合併した場合ということです。

これを図示すると4、節頭に掲載したようになります。

●高血圧症による障害の等級例示
等級 障害の状態
1級 悪性高血圧症
2級 1年内の一過性脳虚血発作、動脈硬化+出血、白斑を伴う高血圧性網膜症
3級

頭痛、めまい等の自覚症状+1年以上前に一過性脳虚血発作、眼底に著明な動脈硬化の所見を認めるもの

大動脈解離や大動脈瘤を合併した高血圧

【診断書はどこをどう見る】

高血圧症用の診断書はないので、障害の状態がよく現れている様式を使うことになります。

等級 障害の状態 診断書様式
1級 悪性高血圧症 120号の6-(2)腎疾患・肝疾患・糖尿病の障害用
2級 高血圧性網膜症 120号の1 眼の障害用
3級

眼底に著明な動脈硬化の所見

大動脈解離や大動脈瘤を合併した高血圧

120号の6-(1) 循環器疾患の障害用

ただし、上記の診断書では障害の状態がよく表せない場合は、120号の7 「血液・造血器、その他の障害用」の様式を使います。つまり、「その他の診断書」を使うことになります。

また、高血圧症の場合は、内臓疾患には珍しく、認定要領に一般状態区分表が出てきません。しかし、上記の診断書にはすべて一般状態区分表

欄があるので、全身状態を無視するわけにはいかないと思われます。ここは総合判断して医師にチェックをつけてもらってください。もちろん、それぞれの診断書の「現症時の日常生活活動能力及び労働能力」の欄も他の記載と矛盾していないかチェックしてください。

 

【診断書で等級を確認する】

●3級の事例

【診断書事例】このケースは難治性高血圧症で、大動脈解離を引き起こしているので、その部位の診断書である様式第120号の6-(1)循環器疾患の障害用を使います。

まず、診断書の項番⑪「循環器疾患」の2に一般状態区分表があります。区分は「イ 軽度の症状があり、肉体労働は制限をうけるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、かるい家事、事務など」にチェックがあります。項番⑩「計測」の血圧は最大で118mmHg、最小で72mmHgですので正常値ですが、降圧剤服用が「有」となっていますので、降圧剤を使っての血圧値だということです。認定要領(1)を見ますと、「高血圧症とは、おおむね降圧剤非服用下で最大血圧が140mmHg以上、最小血圧が90mmHg以上のものをいう。」とあります。この事例では、大動脈解離や大動脈瘤を合併した高血圧ですので3級と認定されたものと思われます。

なお、認定基準「第11節 心疾患による障害」⑤大動脈疾患を見ると、「2 胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤に、難治性高血圧を合併したもの」は3級との記載があります。「難治性の高血圧」とは、「適切な薬剤3薬以上の降圧剤を適切な用量で継続投与しても、なお、収縮期血圧が140mmHg以上、又は拡張期血圧が90mmHg以上のもの。」とあるので、心疾患の認定要領では3級に該当しないということになります。つまり、心疾患による障害では該当しないケースでも、高血圧症による障害では認定されることがあるということになります。

高血圧症による障害もほとんどの場合、合併症を伴います。また、障害の状態に該当する場合というのも、ほとんど合併症によるものです。したがって、高血圧症による障害で請求することは少ないと思われます。しかし、合併症で請求できない場合に、"もしかしたら、高血圧症による障害で請求できないか"という視点は常にもっておいてください。